出所:http://japanese.china.org.cn | | 発表時間:2023-05-06
文=ジャーナリスト 木村知義
中国におけるこの10年を振り返る時真っ先に浮かぶことは、中国の存在が大きくなることによって世界の「風景」がすっかり変わってしまったということである。このことの歴史的意味を知らなければ中国と世界を誤りなく捉え、認識することができない時に立ち至ったということでもある。
中国の進化と深化の10年
中国のこの10年は、進化と深化の10年だと言える。
経済における中国の成長、発展についてはすでに2010年にGDPにおいて世界第二の経済規模となり、2030年前後には米国と拮抗あるいは凌駕するという予測が多くの識者によって語られている。従って、経済の成長、発展はもはや「承前」の事として、時代に対する触角を研ぎ澄まし、中国と世界に目を凝らして考えてみる必要がある。すると、中国のこの10年は経済にとどまらず理念、政策はじめあらゆる分野、領域において進化と深化の道を力強く歩み続けていることに気づく。しかも片時もその歩みを止めることがない。ゆえに、そこでは新たな世界秩序にむけての胎動を予感させられるのである。
米国主導の世界秩序の揺らぎへ
これは中国国国内にとどまらない。例えば、なにかにつけ対決ばかりを語る米国の「立ち居振る舞い」に如実に現れている。自らの構想、発意にもとづいて自律的に動くことを忘れたかのように、ことごとく中国の動いた後を追って東へ西へと右往左往する姿を世界に晒すことになった。ASEAN諸国しかり太平洋島嶼諸国、ラテンアメリカ・カリブ海諸国しかりである。さらに、もはや度を失ったとしか言いようのない中国への「制裁」「規制」の連発である。つい先日もバイデン政権は半導体製造装置の対中輸出規制の対象を大幅に拡大する「包括的措置」を発表した。これは「中国への技術移転に関する米国の政策において、1990年代以降で最大の転換となる可能性がある」とロイター通信は伝えた。大国の威信も品位、風格も失ったこのような米国の姿を世界が目にするのは、かつてなかったことである。
つまり、この10年は、中国のたゆまぬ進化と深化を契機として、米国一国覇権の力による支配の構図が根底から揺らぎ、多極、多様な力学が世界を突き動かす時代となってきたということである。そして、新興国や途上国をはじめ、世界の大勢はすでに「非米世界」が多数を占める時代となっている。
「人類運命共同体」と「一帯一路」のダイナミズム
この歴史的な大転換の最大の誘因は、中国が世界に問い、語りかけてきた「世界のあり方に」にかかわる提起にある。その最も象徴的なものは人類運命共同体の提唱であり、「一帯一路」イニシアティブのダイナミズムである。
「人類運命共同体」はほぼ10年前の提起以降、理念を実体あるものにしていくために数々の努力が重ねられてきた。昨年9月の国連総会で習近平主席は「グローバル発展イニシアティブ」を打ち出し、11月のアジア太平洋経済協力会議CEOサミットで「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を提起、さらに年明けに開催された世界経済フォーラムのテレビ会議で「グローバル発展イニシアティブ」について「全世界に開放された公共財」であり「各国と手を携えて協力し、立ち後れる国がひとつもないよう努力したい」と中国の決意を世界に向けて発信した。まさに息つく暇もなく「人類運命共同体」構築にむけてのビジョンと政策が深められ、進化し、加速している。「立ち後れる国がひとつもないよう努力したい」という習主席による中国の決意の表明は、何にもまして途上国を勇気づけるものとなった。一方、「一帯一路イニシアティブ」は、今では地球をぐるりと取り巻く壮大な「グローバル・イニシアティブ」として躍動している。人類運命共同体の提唱、「一帯一路」イニシアティブ展開のダイナミズムは、まさしくこの10年の中国の歩みと軌を一にしているのである。
「伙伴関係」と新たな国家関係の創造
では、これらがなぜ新たな世界秩序にむけての胎動を予感させるのかである。
その理由の大きな一つは、一般に「パートナーシップ」と訳される「伙伴関係」にある。これはパートナーとはなるが同盟を結ばない、すなわち条約や協定によって縛る関係ではなく、信頼関係に基づいて構築される柔らかな新たな国家関係の「ありよう」なのである。
馬朝旭外交部副部長は9月末の会見において「現時点で中国と国交のある国は181ヶ国にまで増え、中国は110余りの国家・地域組織とパートナーシップを結び、友好関係を拡大し、パートナーシップのネットワークは全世界をカバーしている」と語った。同時にこの会見で馬氏は「中国がグローバル・ガバナンス体制の変革を後押しするのは、『別の体制を構築』するためではなく、現体制をより公正で合理的なものにするためだ。国際情勢がいかに変わろうとも、中国は真の多国間主義を実践する決意を変えず、グローバル・ガバナンスの整備への努力を変えず、多国間協力を推進する行動を変えない」と述べて、中国が「別の体制の構築」をめざしているのではないことを強調した。
しかし、「非米世界」の多くの国々の側の視点に立てば、新たな世界秩序への渇望が募る時代にあることは間違いない。すなわち、こうした新たな国家関係構築の広がりは、新たな世界秩序への胎動を予感させるものになるのである。
新たな時代に向けて歩む中国と世界の未来
こうして「変わる世界」と中国の10年について考察を重ねている時、実に興味深い言説に出会った。
「中国が世界のどこかで何かを試みると、その国の政府や住民が何を望んでいるかも十分に考えずに、とにかく対抗しようとする罠にワシントンははまっている」として「中国との競争がアメリカの外交政策を疲弊させ始めている」と警鐘を鳴らしているのである(「米対中戦略の落とし穴-ビジョンなきゼロサム思考の弊害」ジェシカ・チェン・ワイス米・コーネル大学教授「フォーリン・アフェアーズリポート」米外交問題評議会2022.10月号)。ワイス氏はさらに重ねて「国際的なルールや制度がアメリカの国益や価値観を反映しなくなるほどに、北京に影響力を譲るわけにはいかないだろう。しかし、もっと大きなリスクは、中国の影響力に対抗することにこだわるあまり、国際システムを麻痺させ、他の大国による代替的国際システムの模索を促し、既存の国際システムを弱体化させてしまうことだ」と述べている。
中国とは立ち位置を異にすることは当然として、しかし、まさに的を射たと言うべき「危機感」が率直に語られている。「動く中国」によって世界が大きく変わりつつあることを冷静に見つめ、直截に語っているとも言えよう。このような現実認識が登場してくることが、中国の存在が、とりわけこの10年の中国の動きが世界にとってどれほど重い意味を持つことになっているのかを如実に物語るものとなっている。
そして忘れてならないのは、こうした中国の歩みの土台を成すものとして、新時代の中国の「新たな発展理念」があり、現代的社会主義建設に向けて「新たな発展段階」に入ったという、過程と段階についての歴史を画する確たる認識があってこそ、中国の存在が、今まさに世界を動かす重要な動力を生む源になっているということである。それゆえに、未来に向けて中国こそが新たな世界秩序への胎動を牽引する存在となっていく、そのことを確信させる「中国この10年」である。
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