日本記者クラブにおける呉江浩大使のスピーチ(全文)

出所:http://jp.china-embassy.gov.cn | | 発表時間:2023-05-04

 4月28日、呉江浩大使は日本記者クラブで講演し、習近平外交思想、グローバル発展イニシアティブ、グローバル安全保障イニシアティブ、グローバル文明イニシアティブの核心的定義について紹介し、新しい時代にふさわしい中日関係の構築について中国側の立場を表明した。全文は以下の通り。


 皆さん、こんにちは

 このたび、日本記者クラブにお招きいただいて、うれしく思います。本日は、新時代の中国外交について皆さんと交流し、中国を認識し、理解するにあたって力になれれば幸いに思います。

 現在の中国は人類の歴史において最も大きく、更に独特な実践と革新を経験しております。中国共産党第20回全国代表大会は、新時代の中国の発展に関する青写真を描き、社会主義現代化国家を全面的に建設する新たな道のりのスタートを切りました。先月行われた全国人民代表大会では、習近平総書記が全会一致で国家主席に再選され、これによって、中国の内外政策の安定性と継続性が確保されることになります。過去10年間、習近平主席のリーダーシップのもと、中国外交は世界のためを思いつつ、変局と変化に立ち向かって、世界の平和維持と共同発展のために積極的に行動を取ってきました。新たな道のりにおいても、中国外交は習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想と習近平外交思想を導きとして、世界各国との親善を深め、協力を強化し、人類運命共同体の構築に努めていきます。

 この共同体の構築は、習近平主席が世界に向けて打ち出した重要な提案であり、習近平外交思想の中核的理念であり、中国の外交理論と実践の革新的成果の集大成であります。これまでの10年間において、この共同体の構築は、理念から行動へ、ビジョンからリアリティへと変わり、連帯と協力によって種々の課題に対応するための力を結集することができました。国際社会からますます歓迎されるようになっております。共同体の構築を推進する重要な柱として、習近平主席はグローバル発展イニシアティブ、グローバル安全イニシアティブ、グローバル文明イニシアティブを近年相次いで打ち出し、「どのような世界を、如何にして構築するか」について中国の主張を全面的に説明し、今日の世界が直面する危機と課題に対する中国の解決策を示しています。これが、新時代の中国外交の理論と行動の指針であります。

 グローバル発展イニシアティブの核心的主旨は、発展本位、すなわち発展の問題を国際アジェンダの中核とし、結束、平等、バランスのとれたグローバル・パートナーシップの構築を提唱しています。発展が全人類共通の追求であり、中国人民は長らく困難な探求の末、自らの国情に即した発展の道を手に入れることができました。今後は中国式現代化の新成果でもって、世界の国々に新たなチャンスと選択肢を提供していきたいと考えております。今では、中国は140以上の国と地域の主な貿易相手国であり、世界経済成長への平均寄与率は10年連続で30%に達し、G7諸国の合計を上回っております。「一帯一路」の推進に伴い、3,000以上のプロジェクトが生まれ、1兆米ドルに近い投資と、沿線国で42万人の雇用が創出されています。ただ、今の世界では、8億人が飢えており、7億人に電気がなく、2億人に仕事がなく、1億人が難民になっていることを忘れてはいけません。このような現実の前で、先に進んだ国がいわゆるルールや秩序を口実にして、私利私欲にしがみつき、一極の覇権を守ろうとして、途上国の貧困脱却、より良い生活の実現を妨げています。こんなことをする情理や道義がどこにあるのでしょうか?中国は160以上の国に開発援助を行っています。南北の格差と発展の立ち遅れの解消、近代化を追求する国を支援し、いかなる国も置き去りにしない責任感で臨みたいと考えております。

 グローバル安全イニシアティブの核心的主旨は、共同、総合、協力的で持続可能な安全観を持って、対立より対話、同盟よりパートナーシップ、ゼロサムよりウィンウィンを目指す決意であります。一国主義やいじめ行為、他国への内政干渉、集団政治や陣営間の対立には我々は反対します。先般、中国はサウジアラビアとイランの歴史的な和解を仲介しました。このことが、さっき申し上げました精神に則っての、対話と協議を通じて紛争や相違を解決する重要な一歩であります。日本の世論も、この取り組みを評価し、中東の和解の連鎖につながるかと期待を示しております。サウジとイランの握手、仲直りが、中東地域の長期的安定への新たなスタートとなるよう望んでおります。ウクライナ危機が発生して1年以上になりますが、中国は一部の国のように火に油を注ぐことはなく、常に平和と協議のために働きかけてきております。朝鮮半島、イラン、アフガニスタン、シリア、パレスチナなどのホットイシューでも、中国による外交的仲介の努力が止まることがありません。テロ、気候変動、サイバーセキュリティ、バイオセキュリティなど、非伝統的な安全保障の課題については、中国は多国間協力の最前線で、建設的な役割を果たしてきました。

 グローバル文明イニシアティブの核心的主旨は、文明の多様性を尊重し、お互いの交流で壁を超越し、相互理解で衝突を超越し、寛容な精神で優劣論を超越することです。文明とは色とりどりなもので、決して上下や優劣はなく、ましてや一色に染まるべきではない、中国は常にこのように主張しています。人種、宗教、価値観やイデオロギーの対立を煽り立てることに我々は賛成しない、特に自国の制度を他の国に押し付けることに反対します。それこそ今日の世界における様々な紛争や混乱の禍根であることが、多くの事実に証明されています。

 習近平主席が指摘しましたように、人類運命共同体の構築は、あるシステムを別のシステムに取って代わり、ある文明を別の文明に取って代わることではなく、社会システム、イデオロギー、歴史、文化、発展レベルの異なる国が国際問題で利益、権利、責任を共有し、より良い世界を共に築こうという最大公約数を形成することです。人類運命共同体の構築という目標はすでに中国の憲法と中国共産党の規約に明記されており、世界に対する確固たるコミットメントであります。我々が提案する3つのイニシアティブは、いずれも開かれて包括的なものであり、閉鎖的で排他的なものではなく、すべての国の参与を歓迎します。各国と手を携えて、正当な利益と発展の権利を守り、真の多国間主義と国際的な公正・正義を守り、国連を中心とする国際秩序を擁護していきたいと思います。地域と世界の重要な一員である日本が、歴史の正しい側に立ち、ともに人類運命共同体構築のパートナーとなっていただくことを心から希望しています。


 皆さん、

 中日関係については、今重大な岐路に立っているという認識です。国交正常化以来最も複雑な状況に直面し、新しい問題、リスク、チャレンジに差し掛かっています。米国が中国へのネガティブキャンペーン、最大限の圧力を繰り広げ、更に他国を引っ張り込んで、強引に中国を封じ込めようとしています。このことが、中日関係に影響を与える最大の外的要因となっています。当面の急務は、中日関係が航路から逸脱せず、停滞、後退することなく、正しい方向性をしっかりと把握していくことです。さらに、両国指導者が何度も確認した重要な合意に則り、両国や両国民の根本的利益を見据え、新しい時代の要請に相応しい中日関係の構築を推進していかなければなりません。そのためには、以下3点に対して双方が真剣に考える必要があるように思います。

 1点目は、新しい時代の要請に相応しい中日関係を構築するために、何を堅持すべきか。外部環境が如何に変わろうと、中日関係には独自の「基軸」があるべきで、それが中日四つの政治文書が定めた原則、精神、方向性であると考えます。昨年の国交正常化50周年に続き、今年は中日平和友好条約締結45周年を迎えます。条約の全文はさほど長くはありませんが、その一文字一文字に重大な意義があります。条約は、中国と日本が平和共存5原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させること、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないこと、両国はいずれも、アジア・太平洋地域においても又は他のいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、また、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国又は国の集団による試みにも反対すると規定しています。これは双方の厳粛な約束であり、履行すべく法的義務でもあります。今日、この文書を読み返しても、その精神は色褪せないばかりか、新しい時代においてさらに重要性を増し、今日直面する問題の対処に極めて的確な存在であると感じられます。

 日本に対しては、中国は常に善隣友好、協力ウィンウィンを主張し、日本をライバルにしたことはなく、なおさら脅威ひいて敵扱いする意思はありません。日本においても、同じ態度をとっていただきたい。残念ながら、最近日本側は、中国を「これまでにない最大の戦略的挑戦」と位置づけ、個別の国の反中、中国抑制に追随して、「中国脅威」を喧伝することによって、軍備拡充を加速しています。日本側がこのような認識と政策基調に固執するのであれば、中日関係の基盤が実質的にダメージを受け、中日関係の健全で安定した発展は語れるわけがありません。条約締結45周年記念を契機に、お互い条約の精神を再確認し、その規定を守り、その義務を履行すべきではないでしょうか。ぜひ日本側が客観的な対中認識を確立し、戦略的自主性を以て、時代の大勢を見極め、建設的な姿勢で両国関係の安定した発展を進めることを期待します。

 2点目は、新しい時代の要請に相応しい中日関係を構築するために、何をコントロールすべきか。現在、中日関係の新旧の問題が次々と顕在化し、挑戦が押し寄せて来る中、それらを効果的にマネージ・コントロールすることは大変重要であります。日本側には、約束と信義を守り、歴史、台湾など重大な問題の善処、中国の核心的利益への損害の停止を求めています。

台湾問題は中国の核心的利益の核心、中日関係の基礎の基礎、越えてはならないレッドラインであります。強調したいのは、台湾は中国の台湾であり、台湾問題をどんな形で解決するかは、完全に中国の内政であり、いかなる外部勢力も干渉する権利がありません。我々は最大な誠意、最大な努力で平和統一を求めます、しかし武力行使の放棄を約束することはしません。日本の友人の中にはこれについて誤解と憂慮を持つ人がいますが、しかしよく考えれば、武力行使を放棄しないことはまさに「台湾独立」に対する根本的な抑止力であり、両岸の平和と安定を維持するための根本的な保証であります。現在の台湾海峡の情勢が緊迫しており、「台湾独立」勢力と外部の干渉勢力が結託して、サラミ戦術で挑発の試みを繰り返し、最終目標は台湾を中国から分離させることにあります。これこそ現状を真に変更させるものであり、災難的な結果をもたらします。一部の国は、「台湾独立」を放任、支持しながら、台湾海峡の平和と安定を口にする、その本質は主権が侵害され、領土の一体性が破壊される局面を中国に押し付けようとするもので、我々は決してそれを容認しません。いわゆる「台湾有事は日本有事」という言い方があります、これはまたあまりにも荒唐無稽で危い。中国の純内政問題を日本の安全保障と結びつけるのは非論理的だけではなく、極めて有害であります。日本という国が中国分裂を企(くわだ)てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになってしまいます。

 3点目は、新しい時代の要請に相応しい中日関係を構築するために、何を強化すべきか。私に言わせれば、互恵協力と友好往来だと思います。今年は中国の改革開放45周年であり、中日両国の利益が深く組み込み、互恵ウィンウィンがみのり豊かな45年間でありました。中国はずっと日本を重要なパートナーとみなし、日本とともに、新たな協力分野の探索、ハイライトの創出、そしてより高いレベルの協力ウィンウィンを実現したいと考えています。中国経済は今年第1四半期に4.5%の成長を見せており、安定と回復の良い傾向にあります。大型市場の強みと内需の潜在力が継続的に放出されます。お国経済界の多くの友人が、中国の発展を見込み、昔も今も、そして将来でも自信を持って対中協力に力を入れると言います。中国との協力は日本経済がこれから発展できるか否かに直結しているとまで話す方がいらっしゃいました。日本企業が中国との協力でより大きな成功を収めることを喜んで歓迎したいと思います。

 同時にご留意いただきたいのは、この協力は公平でオープンなものであるべきことです。特に人為的な制限、ましてはデカップリングやサプライチェーンの切断はあってはいけません。半導体の輸出規制強化という発表がありました。これが中国を狙ったものかどうかは、皆がはっきりとお分かりじゃないかと思います。米国から理不尽な経済弾圧を受け、その痛みが未だ肌に残っている日本には、悪事に加担するのはどうかと思います。そうするのであれば、中国市場だけでなく、日本の半導体産業の未来も失うことになるでしょう。中国側としては、この政策が実際に与える影響を真剣に評価し、自国の利益がむやみに損なわれるのを座視することはありません。中日がルーズルーズ、どこかの国がほくそ笑うようなこと、我々は目にしたくないのです。



 私が着任して1カ月余りになりますが、各界の方々に挨拶回りをしている時に、一番良く聞く話は、早く中国を訪問し、コロナで中断された交流と協力を回復したいということでありました。中日間には多くの矛盾や相違がありますが、中日関係は非常に重要だと、それを改善・発展させるべきだと、そういう声が高まっています。今やお互いコロナ対策が新たな段階に入りました。これを機に、積極的に人的往来を再開し、両国民のより多くのフェイス・トゥ・フェイスの交流によって、相互理解を深め、誤解や誤算を減らしていくべきではないでしょうか。

 若者は中日両国の未来を担っております。様々な調査によると、両国の若い世代の親近感は他の年齢層より遥かに高いことを心強く思います。最近日本のアニメ映画「スラムダンク」、「すずめの戸締まり」は中国で大好評を受け、日本国内以上に人気を博しています。中国のオンラインゲーム「原神(げんしん)」も日本で大ヒットし、日本が最大の海外市場となっています。また、最近訪れた本屋では、中国のSF小説『三体』がベストセラーとして、たくさん横並びにされているなど、双方には文化的な共鳴や意識の共有がたくさんあることがわかります。両国の若者たちは友人、パートナーになれると確信しています。それが中日関係の将来に繋がると思います。

ご清聴ありがとうございました。


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